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踏基のダンス句抄-その2



●手鏡にカンナ映して少女老ゆ

 ひたすらに踊る少女は手鏡に
     
映すカンナの燃えぬ間に老ゆ
  
 ・木犀やみな再会の笑みをみせ
 
パーティの会場出でて笑み交わす
        
みな再会の木犀の闇 
    
 ・蘭の香や眉根寄るとき笑むときも
 
あるときは笑むほど蘭の匂いたち 
       
あるは決して眉根寄せたり

 ・茎揺らし蕊おぞましき曼珠沙華
高麗郷の丘に乱舞の曼珠沙華
気を惹く蕊の茎ぞおぞまし


 ・曼珠沙華染めて逢瀬の木の間かな
曼珠沙華逢瀬夢見て緋に染まり
木の間隠れに花弁を広ぐ


 ・壁の花秋燕去りて野に枯るる
舞踏会秋燕もどる寂しさに
壁から離る花は野に枯る


 ・カンナ乱舞背信今も許さざる
若き日の背信何故に許さざる
カンナ乱れて咲きしフロアー


 ・人妻の触る彼岸花茎細き


 ・背後より声かけて舞ふ秋の虹
気がつけば背後に忍ぶ秋の虹
出逢ふ薄日にうたかたの舞ひ


 ・林檎むきかそけき夢の光舞ふ


信濃路に林檎の皮の舞ひながら
少女夢みし光るナイフを


 ・寄る星のうすき銀漢演舞場
手をとりてうすき銀漢横たわる
織女牽牛踊る舞台に

●新涼やルンバ老女の背を立てる

老女祈る深呼吸して背を立てし涼新たなる初動のルンバ

・舞踏会だまされて摘む葡萄かな
おもわくの葡萄の粒を摘みたれば艶騙されて舞踏会果つ
   ・ 茜

●抱きつつ鼓動を覚ゆ相方の生きてたまゆら離れては触る

 ・長き夜を肩抱き踊るブルースに秘めて戯る透くや黒薔薇

陽に踊る銀杏乾いた音で落つ

●つかの間のタンゴ聴かせて夕紅葉
もみずるの床に舞い込む一葉さえつかの間踏みしタンゴ思ほゆ


枝の櫻も風に踊る

カンナの花

ルンバを踊る

Dance Poetry 試行2