踏基のダンス句抄-その1



愛染の衣干す蝶ひらひらと
 ⇔ひらひらと悶えし蝶か愛染の
ぼんのう鎮む衣干さずや

夏蝶の見詰めあいつつ連舞かな
 
見詰め合う連れ夏蝶の哀れさよ
刹那の時を舞ひ狂ふ性

 
 
・桜の夜ふいにダンスの影踏みぬ
・舞姫のおさむるごとく桜臥す
・二連蝶じゃれてサンバの重なりて


●ひらりと衣舞せし薔薇の髪飾り

  緋の薔薇を飾りし髪の乱れなき
翻す衣に下肢露わなり


 ・おさめ果つ薔薇なげて臥す光の輪
  

●捨て置かれ主なき冬のラテン靴

 ひらりと手撓うルンバの愛らしき雪夜を慕う影をしるべに

・短夜やルンバ焦がるる女豹いて
 
しなやかに忍ぶ女豹の目付きしてルンバで灯す短夜のやみ

 ・炎昼にサンバの肌の乳房かな
 
炎昼のサンバは青き下着咲かせかたき乳房の先端閉ざす

 ・睡蓮に古きほとけも舞ひ立つか
 
知らざるや未明ときめく水面揺すり古代の蓮も御仏も舞ふ

 ・蛍火のひとつワルツの弧を描き
 
をとぶ蛍火ひとつ群れ離れ弧を描きつつワルツを教ゆ

●桃笑まし競技のドレス仕舞ふ妻(メ)と

 白桃の匂うが如き妻(メ)と笑まし競技ダンスのドレス仕舞わる 
  

 ・水面とけて集ふあきつの競技会
 
夫々に集ふあきつは翅を閉ざし水面溶くごと競技会待つ 
  
 ・入賞すおろしたる天秋の声
 
競技会入賞寿ぐ人の輪におろせし天の秋の声うれし 
  
 ・凛と舞ふ少女秋の香漂わす
 
凛として競技ダンスで踏む床に秋の香醸す少女眩しき
   

 ●痺れるほど秋蝶ささふ風の腕

 痺れるほど支える風の腕の中触る秋蝶の離れては触る 
 
 ・連れ舞ひし秋蝶ついと離れけり
 
ついと離れ空に昇りし秋蝶は連れを忘れてひかり野に舞ふ
 
  
 ・師の技を秋蝶習ふ翅づかい
 
スタジオで師より賜る技習ふ秋蝶のごと翅をひろげて 
 
 ・細き腰すがりて揺する法師蝉

 
法師蝉余命を告げる木漏れ日にすがる手足で細き腰ふる 
  
 ・舞衣装着替えて羽化のぎんやんま
 
ラメ入りの衣装着替えて挑発す君ぎんやんま羽化したあとの
  
 ・ラメ入りのドレス透かして鬼やんま
 
かろがろとラメのドレスに透ける胸鬼やんま翔くゆきあいの空
 
  
 ・秋あかね空すぼめつつ翅たたむ
 
秋茜群れて染めゆくゆきあいの空をすぼめて翅をたたむや



窓の外では雪も踊る

ワルツを踊る

ゆりの花も咲きながら踊る

Dance Poetry 試行1