・夜はタンゴ氷のように火のように
・母子踊る粉雪の如く静寂に ・脚組んで極月の灯の高階に
・老いながら椿となって踊りけり
・暖炉焚く夫よタンゴを踊ろうか (S27年「白骨」より)
誓子のD句が本邦初ならば、初女流D句は鷹女だったと思います。
昭和初期女流4T 多佳子 鷹女 立子 汀女の中で鷹女のみ踊れたからです。特にタンゴと椿を愛した鷹女の句に誓子 三鬼と異なる俳趣を感じます。
タンゴにchase(追う意)と言うステップがあります。美しい人妻鷹女は老いに追いの音を重ね「意中の人を踊りながら椿になるまで追いかけて・・老いたい!」との願を詠ったように思えるからです。まさか盆踊り句と解釈する人は誰もいないでしょう。
そこに俳句結社に所属せず、虚と超現実の美 ダンスポエジーを詠い上げる孤高の女流歌人の強い個性を感じます。
鷹女の詠んだ下記の椿句は
落椿投げて暖炉の火の上に/虚子 を意識したのでしょうか?・
・暖炉昏し壷の椿を投げ入れよ (他椿句20数句あり)
・笹鳴きにあいたき人のあるにはある
・詩にやせて2月渚をゆくはわたし
・白露や死んでいく日も帯締めて
・踊るなり月に髑髏の影を曳き
・この樹登らば鬼女になるべし夕紅葉
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